原状回復とは?基本的な定義と目的

原状回復は、賃貸物件を退去する際に、借主が物件を契約時の状態に戻すために行う修繕作業のことを指します。具体的には、壁紙の張り替えや床の修繕、設備の撤去、清掃などが含まれます。
通常の損耗(経年劣化)は、借主の負担とされないことが多いですが、故意や過失による損傷については、借主が修繕費を負担することが一般的です。
原状回復は、賃貸物件を退去する際に必ず行うべき重要な手続きです。これを怠ると、敷金が返還されない、追加費用を請求される、法的トラブルに発展するなど、借主にとって大きな負担が発生します。また、賃貸市場での信用問題にも影響するため、適切な時期に計画的に原状回復を行うことが重要です。
原状回復の費用を左右する3つの要素
原状回復工事の費用は「物件の広さ」だけでは決まりません。退去条件(スケルトン戻し or 現状渡し)、物件の用途(オフィス・飲食・小売)、管理会社が指定する仕様によって金額が大きく変わります。
たとえば、同じ50㎡のテナントでも、壁紙の貼り替えだけなら数十万円、スケルトン戻しなら数百万円になることもあります。この差を見積もり段階で見逃すと、退去直前に予算オーバーを起こす原因になります。
原状回復の費用相場とは?総額と内訳を徹底解説
原状回復の費用は、物件の広さ、種類、損耗の度合い、そして依頼する業者によって大きく異なります。以下にて物件のタイプ別に総額の目安を記載し、その内訳を具体的に説明します。
住宅物件の原状回復費用相場
総額の目安
- 一般的なアパート(50〜70㎡):20万円〜50万円
- マンション(70〜100㎡):40万円〜80万円
住宅物件の原状回復費用は、部屋の広さや損耗の状態に大きく左右されますが、一般的なアパートやマンションの退去時には、20万円から80万円程度が相場です。
費用の内訳
| 工事内容 | 単価・費用目安 | 備考 | |---|---|---| | 壁紙の張り替え | 1,000〜2,500円/㎡ | 50㎡の物件で20㎡分を張り替える場合、約2万〜5万円 | | フローリングの修繕 | 3,000〜5,000円/㎡ | 30㎡のフローリング修繕で9万〜15万円 | | クリーニング費用 | 2万〜5万円(物件全体) | キッチン・浴室・トイレなど水回りが特に重要 | | 設備の撤去・修繕 | 1万〜3万円/台 | エアコン、照明器具の撤去費用 |
オフィス物件の原状回復費用相場

総額の目安
- 中小規模オフィス(100〜200㎡):50万円〜150万円
- 大規模オフィス(200㎡以上):100万円〜300万円以上
オフィス物件は、家具や備品の撤去、内装やパーティションの修繕などの大規模な作業が伴うため、住宅に比べて費用が高額になります。特に、IT機器や配線設備の撤去費用がかかることが特徴です。
費用の内訳
| 工事内容 | 単価・費用目安 | 備考 | |---|---|---| | パーティションの撤去 | 2万〜5万円/カ所 | 設置箇所ごとに費用が発生 | | 配線・IT設備の撤去 | 10万〜30万円/50㎡ | 専門業者が必要。中規模オフィスの目安 | | フロアのクリーニング | 500〜1,000円/㎡ | 100㎡のオフィスで約5万〜10万円 | | 照明・空調設備の撤去 | 1万〜5万円/台 | 大規模オフィスでは複数台の撤去で費用増加 |
商業施設・店舗の原状回復費用相場
総額の目安
- 小規模店舗(50〜100㎡):50万円〜200万円
- 大規模店舗(100㎡以上):200万円〜500万円以上
商業施設や店舗の原状回復では、内装や特注設備の撤去が必要となるため、住宅やオフィスよりもさらに高額になるケースがあります。特に、厨房やカウンター、什器類の撤去・修繕は大きな費用を伴います。
費用の内訳
| 工事内容 | 費用目安 | 備考 | |---|---|---| | 厨房設備の撤去 | 10万〜50万円 | レストランやカフェでは大規模になりやすい | | 什器・カウンターの撤去 | 5万〜20万円 | カウンターが大規模な場合10万円以上 | | 内装全体の修繕 | 50万〜200万円 | 壁や床の修繕。広さ・複雑さで変動 | | クリーニング費用 | 10万〜30万円 | グリスや油汚れが溜まる厨房は高額になりやすい |
実際の施工事例をもとに費用相場を比較
以下の表は、弊社が実際に施工した商業施設やオフィスの原状回復にかかった費用をまとめたものです。各物件の広さ、席数、指定業者の見積もりと、弊社の費用削減結果を示しています。
| 物件タイプ | 座席/広さ | 他社見積もり費用 | 弊社実施費用 | 削減率 | |---|---|---|---|---| | カフェ(新宿) | 70席 | 1,500万円 | 400万円 | 73% | | カフェ(銀座) | 20席/50㎡ | 1,500万円 | 600万円 | 60% | | オフィス(虎ノ門) | 100㎡ | 200万円 | 200万円 | 0% | | レストラン(六本木) | 79席/213㎡ | 6,500万円 | 3,500万円 | 46% |
事例1:新宿ルミネ(カフェ/70席)
- 場所: 新宿
- 物件タイプ: カフェ(70席)
- 他社見積もり費用: 1,500万円(指定業者)
- 弊社実施費用: 400万円(グループ会社で実施)
- 削減額: 1,100万円
新宿ルミネのカフェの原状回復では、指定業者から1,500万円の見積もりが提示されましたが、実際にはグループ会社が施工を担当し、400万円程度で完了しました。特にこの案件では、施工がJR新宿駅の地下改札横で行われ、駅が封鎖された深夜帯にしか作業できないという難条件がありました。工事の特殊性にもかかわらず、コストを大幅に削減できたことが特徴です。
事例2:銀座SIX(カフェ/20席)
- 場所: 銀座
- 物件タイプ: カフェ(20席/50平米)
- 他社見積もり費用: 1,500万円(指定業者)
- 弊社実施費用: 600万円(グループ会社で実施)
- 削減額: 900万円
銀座SIXのカフェでは、1,500万円の見積もりに対して600万円での施工が行われました。高級商業施設であり、最新の設備を誇るため、見積もりが高額でしたが、コスト削減に成功した事例です。
事例3:虎ノ門ヒルズ(オフィス/100平米)
- 場所: 虎ノ門
- 物件タイプ: オフィス(100平米)
- 他社見積もり費用: 200万円
- 弊社実施費用: 200万円
虎ノ門ヒルズのオフィスでは、見積もりどおり200万円で原状回復が完了しました。規模が比較的小さく、設備の撤去や修繕が少なかったため、費用が低く抑えられました。
事例4:六本木ミッドタウン(レストラン/79席)
- 場所: 六本木
- 物件タイプ: レストラン(79席/213平米)
- 他社見積もり費用: 6,500万円(指定業者)
- 弊社実施費用: 3,500万円
- 削減額: 3,000万円
六本木ミッドタウンのレストランでは、指定業者による6,500万円の見積もりから、3,500万円に削減されました。コスト削減には、弁護士を交えた交渉が長期間にわたって行われたことが影響しており、大規模な原状回復作業でも費用削減が実現した例です。
見積もり時に確認すべき5つのチェックポイント
原状回復の見積もりを受け取ったら、以下の5点を必ず確認してください。
- 内訳が明確に記載されているか — 「一式」とだけ書かれている見積もりは要注意。工事項目ごとに「数量×単価」の形式で記載されている業者を選ぶ
- 追加費用の発生条件 — 「現場で判明した場合は追加」と書かれている場合、事前に追加費用の上限額を確認する
- 産業廃棄物処理費が含まれているか — 解体工事に伴う廃棄物の処理費用は別途請求になるケースが多い
- 管理会社の検査基準を業者が把握しているか — 検査基準を知らない業者は手戻りが発生しやすく、結果的に追加費用がかかる
- 施工保証の有無と期間 — 引き渡し後に不備が見つかった場合の対応を、契約前に確認する
原状回復の費用を抑えるためのコツ
上記の事例を通じてわかるように、原状回復の費用は業者によって大きく異なります。以下の方法で費用を抑えることが可能です。
1. 複数の業者から見積もりを取る
コスト削減の最初のステップは、複数の業者から見積もりを取得し、比較することです。業者ごとに価格設定や作業内容が異なるため、価格だけでなく、具体的な作業範囲も確認しましょう。最低3社からの相見積もりを推奨します。
2. 早期に計画を立てる
退去の数カ月前から原状回復を計画し、必要な修繕や撤去作業を事前に確認しておくことで、無駄な費用を抑えることができます。急な依頼は費用が高額になることがあるため、退去の3ヶ月前には業者選定を始めるのが理想です。
3. 管理会社との交渉を業者に任せる
原状回復の範囲はオーナー・管理会社との交渉で変わります。交渉経験のある業者に依頼することで、本来は貸主負担である経年劣化分の工事を削減できる場合があります。
4. 不要な造作を事前に撤去する
什器・家具・書類棚など、自分たちで撤去できるものは工事前に片付けておきましょう。業者に撤去を依頼すると人件費が上乗せされます。
5. 指定業者以外の選択肢を確認する
管理会社が業者を「推奨」している場合でも、契約上は借主が自由に業者を選べるケースがあります。契約書の原状回復条項を読み直し、「指定」なのか「推奨」なのかを確認しましょう。
よくある質問
Q. 見積もりは無料ですか?
現地調査からお見積もり提出まで完全無料で対応している業者が多いです。F・Sプランニングでも、見積もり作成費用は一切いただいていません。相見積もりも歓迎しています。
Q. 保証金(敷金)で原状回復費用はまかなえますか?
物件や退去条件によります。小規模オフィスであれば保証金の範囲内で収まることもありますが、飲食店のスケルトン戻しの場合は保証金を大幅に超えることが一般的です。早い段階で見積もりを取り、保証金との差額を把握しておくことが資金計画のポイントです。
Q. 工事期間はどのくらいかかりますか?
物件の規模と工事内容によりますが、一般的なオフィスであれば5日〜2週間、飲食店のスケルトン戻しであれば2〜4週間が目安です。退去日から逆算して、十分な工期を確保してください。
Q. 指定業者の見積もりが高すぎる場合はどうすればいいですか?
まず契約書の「指定業者条項」を確認してください。「指定」ではなく「推奨」であれば、他の業者に依頼する権利があります。また、弊社のように弁護士を交えた交渉サポートを提供している業者に相談することで、費用削減の余地が見つかる場合があります。
まとめ
原状回復の費用相場は、物件の種類や広さ、損耗の状態によって大きく異なります。住宅物件では20万円〜80万円、オフィス物件では50万円〜300万円以上、商業施設では50万円〜500万円以上が目安です。
上記の施工事例でもわかるように、業者の選び方ひとつで数百万円〜数千万円の差が生まれることもあります。複数社の見積もりを比較し、工事内容を理解したうえで判断することが、最も効果的なコスト削減策です。
F・Sプランニングでは、現地調査・お見積もりを無料で承っています。他社の見積もりをお持ちであれば、比較検討のご相談も可能です。
