賃貸物件を退去する際には、契約時の状態に物件を戻す「原状回復」が必要になります。原状回復は、次の入居者が快適に物件を利用できるようにするための重要なプロセスです。しかし、どこまでが借主の責任で修繕すべき範囲なのか、また、どうやって原状回復を進めれば良いのか、悩むことも多いでしょう。
本記事では、原状回復のやり方について、DIYでできる部分と専門業者に依頼すべき部分を詳しく解説し、効率的かつ費用を抑えた進め方をご紹介します。
原状回復とは?基本的な定義と目的を理解する
原状回復とは、賃貸物件を契約時の状態に戻す作業のことを指します。これには、物件の損耗や汚れ、借主が行った改装などを元に戻すことが含まれます。
特に、賃貸契約では、通常の生活で生じる損耗や経年劣化は「通常の損耗」として認められ、修繕義務から除外されることが多いです。たとえば、フローリングの摩耗や壁紙の日焼けなどがその例です。しかし、借主が故意に行った改装や損傷は、そのままにしておくことはできません。
原状回復の目的は、次の入居者が快適に利用できるよう、物件を清潔で整った状態に保つことにあります。特に、物件の種類によっては、貸主が指定する範囲が広がることもあるため、契約書に明記されている内容をよく確認し、どこまでが原状回復の対象になるかを理解しておくことが求められます。
原状回復の具体的なやり方:ステップごとに解説
原状回復を正しく行うためには、順序立てた計画が必要です。ここでは、効率的に進めるための具体的な原状回復のやり方についてステップを解説します。
ステップ1:現状確認とリストアップ
まず最初に行うべきは、物件全体の現状を確認することです。壁、床、天井、設備などすべての箇所をチェックし、どの部分が修繕の対象となるかをリストアップします。これには、壁の傷や汚れ、床のへこみ、家具を移動した際にできた跡、照明や設備の不具合などが含まれます。
リストアップが完了したら、それぞれの項目について「借主が修繕すべき部分」と「通常の損耗とみなされる部分」に分けます。この段階で、賃貸契約書に基づき、何が修繕対象となるかを確認することが重要です。
契約書に明確な記載がない場合、国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」に基づいて判断することができます。ガイドラインでは、通常の損耗と借主の責任範囲についての基準が示されています。
ステップ2:必要な修繕箇所の修理

次に、リストアップした修繕箇所の修理に取り掛かります。たとえば、壁に開いた穴や傷は、パテで埋めた後、必要に応じて壁紙を部分的に張り替える必要があります。床の擦り傷やへこみも修繕が必要です。家具や物の移動によってできた跡や損傷は、専用の補修剤や工具を使って元の状態に近づけます。
DIYで対応できる軽微な修繕は、自分で行うことも可能ですが、大きな損傷や専門知識が必要な修繕については、業者に依頼することが賢明です。特に、内装や設備の修理では、素人が手を加えるとさらに問題が悪化することがあるため、適切な判断が求められます。
ステップ3:清掃のポイント
修繕が完了したら、物件全体のクリーニングに移ります。清掃は原状回復の最後のステップであり、貸主が物件を引き渡す際に非常に重要な要素です。
特に重点的に清掃すべき箇所:
- キッチン: 油汚れがつきやすい壁や換気扇
- バスルーム: カビが発生しやすいタイルやシャワー周り、鏡の水垢
- トイレ: 便器・タンク周りの水垢や黄ばみ
- 床・カーペット: 全体的な清掃とワックスがけ
- 窓ガラス・サッシ: 汚れ残りは検査で指摘されやすい
- エアコンのフィルター: 清掃を忘れがちだが、検査項目に含まれることが多い
ステップ4:業者への依頼のタイミングと選び方

自分でできない大規模な修繕や清掃については、専門の業者に依頼することが一般的です。たとえば、壁全体の張り替えや大規模なクリーニング、電気や水道設備の修理などは、専門業者の知識と技術が必要です。
業者を選ぶ際の4つのポイント:
- 複数の業者から見積もりを取る — 最低3社。費用や作業内容を比較してから決定する
- 過去の実績や口コミを確認する — 同じ物件タイプでの施工経験があるか
- 対応の丁寧さを確認する — 初回の問い合わせ時の対応速度や説明の分かりやすさ
- 作業スケジュールと追加費用の発生リスクを事前に確認する — 特に大規模修繕の場合は重要
DIYでできる原状回復とプロに任せる部分の違い
原状回復のやり方には、簡単な作業を自分で行うDIYと、専門的なスキルや設備が必要な部分をプロに任せるという2つの選択肢があります。
DIYでできる原状回復の具体例
| 作業内容 | DIY可能度 | 費用の目安 | 備考 | |---|:---:|---|---| | 壁の小さな傷や穴の修復 | ◎ | 数百〜数千円 | 市販のパテ+タッチアップペイントで対応可能 | | 軽度な汚れやシミの除去 | ◎ | 数百〜数千円 | カーペットのシミ取り、フローリングのワックスがけ | | 配線の整理と取り外し | ◎ | 0円 | IT機器や家電の配線整理、ネットワークケーブルの取り外し | | 什器・家具の搬出 | ◎ | 0円〜数千円 | 業者に頼むより自力で搬出した方が安い | | 簡易クリーニング | ◎ | 数千円 | 床掃除、窓拭き、サッシの清掃 |
プロに任せるべき原状回復の具体例
| 作業内容 | 理由 | |---|---| | 電気工事や配管作業 | 法律により専門資格が必要。素人が行うと事故・法的リスクあり | | 壁紙の全面張り替え | 広範囲の施工は仕上がり品質でプロの技術が必要 | | 大規模なクリーニング | 油汚れ・カビの除去、業務用設備の清掃は専門機材が必要 | | パーテーション・造作壁の撤去 | 天井まで届く構造物の撤去は安全上、業者が必須 | | スケルトン戻し | 重機・専門知識・産業廃棄物処理が必要。DIYは不可能 |
注意すべきポイント:原状回復で発生しやすいトラブル回避法
よくあるトラブル例
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「通常の損耗」か「修繕が必要な損傷」かの判断の違い — 長期間の使用によるフローリングの磨耗や、家具の移動による軽微な跡は通常の損耗として扱われるべきですが、貸主側が修繕を要求するケースがあります。国土交通省のガイドラインを参考にすることが有効です
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入居時の状態が不明確な場合のトラブル — 入居時の物件の状態が記録されていない場合、退去時に「元の状態がどうだったか」をめぐって争いになることがあります。入居時に物件の写真を撮影しておくことが重要です
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修繕範囲の解釈違い — 賃貸契約書に記載されている修繕範囲の解釈が異なると、どこまで修繕すべきかで争いが生じます。疑問点があれば契約時に貸主に確認しておくことが必要です
トラブルを防ぐための具体的な対策
- 契約書の内容を事前にしっかり確認 — 修繕対象となる範囲や経年劣化についての記述を確認し、自分が負担すべき部分を理解する
- 物件の状態を入居時に記録しておく — 写真や動画で記録。退去時に「どの損傷が入居時からあったものか」を証明できる
- 貸主と定期的なコミュニケーションを取る — 退去が近づいたら、早めに貸主と物件の現状を確認し、修繕対象を合意しておく
- 管理会社とのやり取りは書面で記録する — 口頭の合意は後から「言った・言わない」のトラブルになる。メールや書面で確認を残す
原状回復の費用を抑える方法と効率的な進め方
費用を抑えるための3つの方法
- DIYでできる作業は自分で行う — 壁の小さな傷や汚れの補修、カーペットのシミ取りなどは自力対応で費用を大幅に削減可能
- 複数の業者から見積もりを取る — 少なくとも3社以上から取得。適正な価格で質の高いサービスを選ぶ
- 早めに計画を立てる — 退去の3ヶ月前から準備開始が理想。急な依頼は費用が高額になりやすい
効率的な進め方
- 優先順位を付けて作業を進める — 大規模な修繕や業者が必要な作業は早めに依頼し、軽微な修繕は自分で時間をかけて行う
- 業者と綿密な打ち合わせを行う — 作業範囲やスケジュール、追加費用の可能性を事前に確認しておく
よくある質問
Q. 原状回復は退去前に完了させる必要がありますか?
契約内容によります。退去日までに完了させる条件が一般的ですが、退去後に猶予期間が設けられているケースもあります。契約書を確認し、不明な場合は管理会社に問い合わせてください。
Q. DIYで行った修繕が管理会社の検査に通らなかった場合はどうなりますか?
検査不合格の箇所は、業者に依頼して再施工する必要があります。DIYにかけた時間・材料費が無駄になるリスクがあるため、検査基準が厳しい物件ではプロに依頼することを推奨します。
Q. 退去時に写真を撮っておくべきですか?
退去時にも物件全体の写真を撮影しておくことを強く推奨します。引き渡し後に「傷があった」「汚れが残っていた」と追加請求されるリスクを防ぐための証拠になります。
F・Sプランニングでは、管理会社との調整から施工・引き渡しまでワンストップで対応しています。初めての原状回復でも安心してお任せください。
