原状回復とは?「原状復帰」「現状回復」との違いや費用、範囲などを徹底解説
原状回復とは?
原状回復とは、賃貸物件やオフィススペースを契約時の状態に戻すことを指します。「原状復帰」と同じ意味を持ちますが、「原状復帰」は建設用語、「原状回復」は法律用語(一般的に賃借契約書で用いられる)で多く使われます。
原状復帰とは?
原状復帰とは、「原状回復」と同じく賃貸物件やオフィスなどを退去時に、入居時の状態に戻すことを指します。
現状回復とは?
現状回復とは、現在の状態に戻すという意味で、厳密には誤用とされています。
原状回復と混同されることが多いですが、契約時の状態ではなく、現在の状態に戻すことを指すため、通常は使用しません。
現状復帰とは?
現状復帰とは、文字通り「現在の状態を基準にして、その状態に戻す」という意味があります。賃貸借契約の場面で、「現状復帰」という言葉が誤って使われることがあります。これは、現在の状態に戻すのではなく、契約当初の状態に戻す必要があるためです。
原状回復を行わないとどうなる?
企業がオフィスや商業施設、工場を利用する際、契約終了時にこの原状回復を実施することが求められます。
企業にとって、原状回復とは単なる契約義務の履行にとどまらず、次のテナントや事業活動のための重要なステップです。そのため、適切な原状回復を行わないと、契約違反や賠償問題に発展する可能性があります。
また、住宅物件や店舗・オフィス物件によってそれぞれ原状回復の範囲や内容が変わってくるため、施工前に確認することが重要です。
ここからは、原状回復の費用や範囲などを解説します。
ぜひご参照ください。
オフィスや店舗物件の原状回復が必要な範囲
オフィスや店舗物件などの、企業向けの原状回復は、個人向けの賃貸物件とは異なり、大規模かつ複雑な原状回復が必要となる場合が多いです。たとえば、オフィスビルや工場、商業施設においては、広大な床面積や専門的な設備、機械の撤去などが含まれます。
具体的な例として、大手メーカーが工場を閉鎖する際に必要な原状回復は【機械設備の撤去・床の修繕・塗装のやり直し】などが必要となります。また、IT企業がオフィス移転を行う場合、大量の配線やサーバーの撤去に加え、壁や天井の修理を求められることもあります。
原状回復は次のテナントが快適に利用できる状態を維持するために行うので、細かな作業も必須となります。また、契約に基づいた原状回復を正しく行わないと、追加費用が発生したり、法的トラブルに発展するリスクもあります。
原状回復が必要とされる範囲例
内装の仕分け:
構造部分: 壁、天井、床などの躯体部分は、原則として賃借人の負担ではありません。
付帯設備: 照明器具、エアコン、給排水設備などは、契約内容により異なります。
内装: 壁紙、床材、間仕切りなど、賃借人が自由に変更できる部分は、原則として原状回復が必要となります。
設備の撤去:
什器備品(机、椅子、棚など)は、原則として賃借人が撤去します。
空調設備や電気設備などの大規模な設備は、契約内容によって異なります。
原状回復の基準:
契約書に具体的な基準が記載されている場合が一般的です。
基準が不明な場合は、入居時の状態を復旧することが原則となります。
例:
オフィスに設置したパーティションやカーペットの撤去、原状の壁や床への復旧
店舗に設置した厨房設備の撤去、排水管の清掃
オフィス全体を改装した場合、契約に基づき原状回復を行う
賃貸物件(個人向け)の原状回復の原状回復が必要な範囲
個人向けなどの賃貸物件における原状回復は、企業向けの大規模なものとは異なり、比較的シンプルで個人が対応しやすい範囲に収まります。賃貸契約終了時に、物件を契約時の状態に戻すことが目的です。これには、通常の使用による損耗や経年劣化は含まれず、借主が故意に加えた改造や汚損の修繕が中心となります。
たとえば、壁に取り付けたフックやピン穴、ペットによる傷、喫煙による黄ばみなどが修繕の対象になります。一方、長期間使用したことによるフローリングやカーペットの磨耗、日焼けによるクロスの色褪せなどは通常の損耗とみなされ、修繕の義務は生じません。
民間住宅での原状回復において、特に注意が必要なのは、敷金との関係です。敷金は、賃貸借契約時に預ける保証金で、物件の損耗や修繕費用に充てられる場合があります。しかし、契約書に明確な記載がない限り、借主は「通常の損耗」による修繕費を負担する必要はありません。
民間住宅の原状回復の目的は、次の入居者が快適に物件を利用できる状態を維持するためです。借主が原状回復義務を怠ると、敷金が返還されないだけでなく、追加の修繕費用を請求される可能性もあります。特に、契約時にしっかりと条件を確認し、引き渡し時には物件の状態を記録しておくことが、トラブルを避けるために重要です。
原状回復が必要とされる範囲例
故意・過失による損傷
壁に大きな穴を開ける、床に焦げ跡をつけるなど、通常の使用を超える損傷は、賃借人の負担となります。
通常の使用による損耗
壁紙の変色、床の擦り傷など、通常の使用による経年劣化は、原則として賃借人の負担ではありません。
設備の交換
浴室のカビ、トイレの詰まりなど、修理で済む場合は修理、交換が必要な場合は契約内容や経年劣化の度合いによって判断されます。
例
壁に自分で取り付けた棚や 取り外した跡、フローリングの傷
浴室のカビ、トイレの詰まり
キッチンシンクの交換
原状回復の流れ:企業向け大規模工事
原状回復の工事が完了するまでの一連の流れを紹介します。
以下は、企業が実施する大規模な原状回復の一般的な流れです。
1.事前調査と見積もり
業者が現地を訪れ、どの範囲を原状回復する必要があるかを確認します。ここで、修繕箇所のリストアップや費用の見積もりが行われます。
2.契約締結とスケジュール策定
業者との契約を結び、工事の具体的なスケジュールを策定します。企業の業務に影響を与えないよう、計画的に進行させることが重要です。
3.工事実施
工事には、壁や床の修繕、設備の撤去、クリーニングなどが含まれます。大規模な原状回復では、複数の業者が連携して作業を進めることが一般的です。
4.最終確認と引き渡し
工事完了後、業者と企業の担当者が最終確認を行い、問題がないことを確認します。これにより、原状回復の完了が正式に認められます。
企業が知っておくべき原状回復費用決定の際の注意点
原状回復費用の主な内訳
原状回復で発生する工事のうち代表的な内訳として、以下の項目が含まれます。
1.内装の修繕
壁紙の張り替え、ペイントの修復、天井の補修などが含まれます。オフィスでは、パーティションの撤去や、床のカーペット・フローリングの修繕も含まれることが多いです。
費用例:オフィスの壁紙張り替えは、1平方メートルあたり1,000〜2,500円が相場です。大規模オフィスでは、これが広範囲にわたるため数十万円から数百万円に達することがあります。
2.設備の撤去
エアコンや照明、配線など、オフィス特有の設備の撤去が必要です。IT企業などでは、サーバーラックや配線が多く、その撤去には専門業者の作業が必要です。
費用例:オフィスのITインフラ設備の撤去には、1拠点あたり10万円から50万円以上かかることがあります。
3.床や壁の補修
特にオフィスや店舗では、家具や備品による床や壁の損傷が多く見られます。傷やへこみの補修、床材の交換などが求められます。
費用例:フローリングの修繕費は1平方メートルあたり3,000円〜5,000円が相場です。オフィス全体のフロアを修繕する場合、100平方メートルあたり30万円以上の費用がかかることがあります。
4.クリーニング費用
最後に、床、窓、トイレなどのクリーニングが必要です。オフィスの清掃業者に依頼することが多く、これも費用に含まれます。
費用例:オフィスの全体クリーニング費用は、1平方メートルあたり500円〜1,000円が相場です。中規模オフィスの場合、20万円前後になることが一般的です。
原状回復の総額費用の相場
企業がオフィスや店舗の原状回復を行う際の総額費用は、物件の規模や状態、設備の撤去範囲によって大きく異なります。ここでは、いくつかのシナリオに基づいて、総額の目安を具体的に紹介します。
1. 中規模オフィス原状回復の総額費用(100〜200平方メートル)
物件タイプ:通常のオフィス、カスタマイズ内装は少ない
主な費用項目:
壁紙の張り替え:20万円〜40万円
フローリングの修繕:15万円〜30万円
配線・ITインフラの撤去:20万円〜50万円
クリーニング費用:10万円〜20万円
その他(パーティション撤去など):10万円〜30万円
総額費用:65万円〜170万円
2. 大規模オフィス(500平方メートル以上)
物件タイプ:広範囲のオフィススペース、カスタマイズ内装や特注設備が含まれる
主な費用項目:
壁紙・床材の全面張り替え:50万円〜100万円
設備撤去(空調、照明、ITインフラなど):100万円〜150万円
クリーニン グ費用:50万円〜80万円
その他(大規模な内装修繕、特注設備撤去など):50万円〜100万円
総額費用:250万円〜430万円
3. 商業施設や店舗(カスタマイズ内装が施されてい る場合)
物件タイプ:内装が特別仕様、店舗やショールームなど
主な費用項目:
特殊内装(壁、カウンター、照明、ディスプレイ)の撤去:100万円〜200万円
床・壁の修繕:30万円〜70万円
設備撤去(空調設備、電気設備):50万円〜100万円
クリーニング費用:20万円〜50万円
総額費用:200万円〜420万円
4. 工場や倉庫(広範囲な設備を含む場合)
物件タイプ:広範囲の床面積、機械設備や専用施設が含まれる
主な費用項目:
機械設備の撤去:100万円〜300万円
床の修繕:50万円〜150万円
配管や電気設備の撤去:50万円〜150万円
クリーニング費用:30万円〜80万円
総額費用:300万円〜680万円
総額の目安について
中小企業のオフィス:通常は50万円〜200万円程度
大企業のオフィスや大規模商業施設:200万円〜500万円以上
工場や倉庫など、特別な設備を含む場合は300万円〜700万円程度になる可能性があります。
注意点
物件の状態や契約内容によっても費用は変動します。カスタマイズされた内装や設備が多いほど、費用が増加する傾向があります。
複数の業者に見積もりを依頼することで、適正な価格帯を把握することが大切です。
これらの費用例を参考に、企業が賃貸物件の原状回復を検討する際の大まかな費用感を掴んでいただければと思います。
原状回復におけるトラブル回避法:契約時の注意点
企業にとって、原状回復とは契約書に基づいた責務であり、トラブルを回避するために以下のポイントに注意することが重要です。
1.契約内容の確認
賃貸契約 を結ぶ際、原状回復の範囲や条件を詳細に確認することが必要です。特に、通常の損耗や経年劣化がどのように扱われるのかを明確にしておくべきです。
2.中途解約時の原状回復
中途解約を行う場合、原状回復のタイミングや範囲についてのトラブルが発生することがあります。契約書に明確な規定を盛り込みましょう。
3.業者との事前打ち合わせ
業者とのコミュニケーション不足は、トラブルの原因となることが多いです。工事の範囲や費用についての詳細な打ち合わせを行い、合意事項を明文化することが重要です。
信頼できる原状回復業者の選び方
企業向けの原状回復では、信頼できる業者に依頼することが重要です。業者を選ぶ際には、以下のチェックポイントに注意しましょう。
1.実績と経験
大規模なオフィスや工場の原状回復に精通した業者を選びましょう。過去のプロジェクト実績や顧客の評判を確認することが重要です。
2.費用の透明性
見積もりが明確で、追加費用が発生しないかどうかを確認しましょう。不明確な費用が含まれている場合、後々トラブルの原因になります。
3.対応力
緊急の依頼や特別な条件に対して柔軟に対応できる業者を選びましょう。企業の業務に影響を与えないよう、スケジュールに柔軟に対応できることが望ましいです。
事後のメンテナンスと持続可能なオフィス管理
原状回復とは、退去や解約時の工事に限らず、事前のメンテナンスが重要です。定期的なメンテナンスを行うことで、原状回復にかかるコストを抑えることができます。
企業は、建物の維持管理に努めることで、原状回復時に修繕が必要となる箇所を最小限に抑えることができます。また、持続可能なオフィス管理を実施することで、環境への配慮やコスト削減にもつながります。
まとめ
原状回復とは、賃貸契約終了時に物件を契約時の状態に戻す作業であり、オフィスや工場などの大規模施設では複雑かつ高額になることが多いです。契約内容や使用状況により修繕の範囲や費用が大きく変わります。適切な業者選定と事前の見積もり取得が重要で、費用は数十万円から数百万円に達することもあります。契約時に原状回復の範囲を明確にし、トラブルを防ぐために業者との密なコミュニケーションを行うことが必要です。早めに情報収集を行い、信頼できる業者に依頼することでスムーズな移転や退去が実現します。
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